第1209回例会
2002年11月25日(月)
◎合唱 『我らの生業』
◎ゲスト紹介 防衛大学校名誉教授 柳 哲以 様
◎ビジター紹介 三浦RC 吉田 益夫 様
◎幹事報告 *横須賀北RCより、例会変更通知受領。
*横須賀南RCより、例会変更通知受領。
*神奈川・横須賀プロバスクラブより、会報受領。

◎出席報告

会員 出席 欠席 本日の出席率 前週メーキャップ前  前週メーキャップ後
38名 26名 12名 68.42% 73.68% 73.68%
◎ニコニコBOX
吉田益夫様 しばらくぶりおじゃま致します。
掛田侑男君 柳哲以様、本日の卓話よろしくお願い致します。
宮本清志君 柳先生、本日の卓話宜しくお願いします。
藤田 武君 柳さん、卓話よろしくお願い致します。
栗田秀樹君 柳先生、卓話楽しみにしています。
綿谷 透君 柳さん、ようこそいらっしゃいました。卓話楽しみにしています。
竹島正毅君 卓話楽しみにしています。
藤原康平君 柳哲以教授、卓話よろしくお願いいたします。
片山軍二君 卓話「すてきな宇宙船地球号」楽しみにしています。
10 栗田秀樹君 吉田益夫さん、ようこそお出掛け下さいました。
11 西田金忠君 先日は野比会・呑み会ありがとうございました。
12 西塚五郎君 先日野比会楽しませていただきありがとうございました。
本日計 12,000円 累計 414,000円
プロバス報告
*藤田会員より10月1日に開催された鎌倉プロバス見学の集いへの出席報告あり。
*最近の傾向は青少年に目が向いているが、少子高齢化が進んでいるので、高齢者に目を向ける必要がある。
*各クラブから18名社会奉仕関係の方々が集まった。
*2780地区では当クラブが最初に作ったが、次に鎌倉が作った。
   小田原、茅ヶ崎、相模原でプロバス作りに関心があるようだ。特に小田原に気運がある。
*一番懸念しているのは、プロバスが隆盛になると、ロータリーの会員減少に関係が出ることです。
*ロータリー色が余りあってもいけないが、適宜な範囲で入会をお勧めします。
   因みに、ロータリー会員は当クラブは2名だが、鎌倉は7名、
   大阪では会員40名の中ロータリー会員が17名いる。
◎卓話 防衛大学校名誉教授(神奈川・横須賀プロバスクラブ会員) 柳 哲以 様 

『素敵な宇宙船地球号?』 

 

 「持続的な系を持つ循環型社会を生み出すために周到な資源・環境政策が求められている。」

*鈴木立也会員による卓話者の紹介後始められた。
*プロバスクラブで2回公開講座を行ったが、その内1回を部内者担当として
   環境問題について受け持ちました。
*今日は日頃考えている環境問題について話してみたい。
*「宇宙船地球号」といった場合、素敵な概念や意識があるが、しかし経済学者ボールディングが
   1962年に提唱した概念は、地球が「宇宙船地球号」だったら地球という有限な燃料を積んだ
   宇宙船(孤立系)は、燃料を使い切るか(資源の 枯渇・資源制約)、船内の空気が汚れることにより
   (廃棄物の捨て場の枯渇・環境制約)、乗組員はいずれ死んでしまう(自滅する)だろうと、
   現代社会の危険性に警告した。
   従って、「地球船宇宙号」は素敵な物ではないということになる。
*地球が誕生してから数十億年、生物や動植物が発生してから数億年も経過しているが、
   ボールディングの言うことが幸い起こらなかった。これは何故だろうか。
*ワインの醸造を例にとって説明します。

@

甘口ワインと辛口ワイン
*ブドウ糖の搾り汁をビンに入れて栓をする(閉鎖系)。
   中のバクテリア(酵母菌)はぶどう糖を食べてアルコールを排泄する。
   アルコールはバクテリアにとって毒物である。
*バクテリアがぶどう糖を食べ尽くして死に絶えたとき辛口のワインができる(資源制約)。
*アルコール濃度がバクテリアの生存限界を超えて死滅すると甘口のワインができる(環境制約)。

A

自滅的な系
*環境から得た資源を加工する(生産活動)。
*消費したあとは廃物(廃熱)となり、環境へ放出する(廃棄)。
*環境から収奪した資源の量は環境に放出された廃棄物の量に等しい(質量保存則)。
*生産と消費だけの閉鎖系は、資源制約か環境制約のいずれかにより自滅する。
*ワイン醸造をいつまでも続けていくためには自滅的な系では困る。

B

開放定常系
*瓶の中のバクテリアが死滅することなく発酵を続けるためには、まず瓶の栓を取る(閉鎖系→開放系)、
   絶えず一定量のぶどう糖(資源)を供給する、発生したアルコール(廃物・廃熱)を
   絶えず抜き取る仕掛けを作る。
*瓶の中のバクテリアは増えもせず減りもせず、定常状態を維持することができる。

C

持続的な系
*定常状態を維持するためには、開放系であることが必要不可欠である。
*系の外から資源(熱)が投入され、その結果、系の中に循環が成立し、
   発生した廃物(熱)を系の外に捨てることができれば、この系は持続的であり
   定常状態を維持することができる。
*以上のように開放・持続的な系の重要なことを述べましたが、地球生態系について考えてみます。
 

 

持続的系としての地球生態系
*地球生態系では、植物が唯一の生産者である。太陽光、炭酸ガス、水で幹を作る。
*動物は消費者である。草や木を食べる。肉食動物も草食動物を食べる。
*生態系が生産者と消費者とだけならば、必然的に自滅の系になる。(ワン・ウエイ)
*土壌中の微生物が有機物を無機物の炭酸ガスと水に戻す分解者となり、物質循環が生じる。
*地球の生態系は資源を消費しない、物質的には持続的な系である。
*微生物が分解活動を行う時発熱する(植物が光合成で太陽から受け取る熱量に等しい)。
*発生した熱は水を水蒸気に変える(気化熱)。
*水蒸気が雲になるとき熱を放出する(凝結熱)。
*雲から放出された熱は宇宙空間に放出される。
*地球の生態系は、太陽光が宇宙から入射することにより生産活動が行われ、
   最終的には雲から長波長放射(遠赤外線)を宇宙に放出することで定常状態を維持される。
*地球の生態系は見事な開放定常系であり、絶妙な生命維持装置である。
 

 

重力場における栄養分の移動(鳥や虫の役割・サケの遡上)
*実際の生態系は地球の重力場にある。
*長い時間のうちには、雨は森の栄養分を川から海に移動してしまう。
*このままでは地球の生態系に循環が成立せず、自滅の系になる。
*動物(消費者)が重力に抗して物質を上方に運ぶ役割を果たしている。
 

 

江戸社会における循環構造(百万都市江戸)
*家庭雑排水は水路を通じて河川に放流され、海に流れ込んだ有機物は、「江戸前」の魚介類や
   「浅草海苔」として回収された。
*鰯から照明用の油を採り、搾りかすは干鰯として農地に投入された。
*排泄物は残らず回収して農地に投入され、農作物は江戸市民の胃袋を満たした。
*江戸市民の経済活動は、重力に抗して物資を移動させ、循環を維持する活動であった。
 

 

江戸型社会経済システムの崩壊
*江戸型の循環システムは1960年代の高度成長時代になって崩壊した。
*日本の各地に残されていた江戸型のシステムも、その大半は80年代までに崩壊した。
 

 

人類が循環系を壊す
*現代の人間は農薬で微生物を殺し、今までの循環系を壊し、資源問題や環境問題を引き起こしている。
   現在は自滅的な系である。
 

 

近代社会経済システム
*近代社会経済システムは、石油をエネルギー源とし、大部分は地下資源に依存する製品を工業的に量産し、
   廃物(熱)を環境に放出することで成立してきた。
   この近代的なシステムは、資源が枯渇するときに止まるか、廃棄物が環境を満たすときに止まる自滅型で、
   まさにボールディングが指摘したような意味における「宇宙船地球号」の運命をたどることになる。
 

 

循環型社会への方向
*最近の循環系への運動としてリサイクル運動がある。
   例えばペットボトルなどはリサイクルのためには、新しく作るための3倍の石油が必要と言われている。
*アメリカ社会を考えても、京都議定書批准拒否で示されたように物質優先主義であり、
   自滅的な系と言える。
*持続的な系を持つ循環型社会を生み出すために周到な資源・環境政策が求められている。

- END -

 

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