平成29年5月1日
現在のエレベーターの状況の変化
大和エレベータ製造株式会社
代表取締役 折 笠 仁 志
ご無沙汰しております。また平素は、皆様に大変なご厚情を賜り厚く御礼申し上げます。
さて1回目は、平成23年の6年前、そして前回は、26年と3年前で3年に1回。皆様に卓話をしておるようです。3年経過すると前回から更に、エレベーター、エスカレーターの状況が変わり、弊社もその法律に追いつくのに精一杯で、法律の解釈、お客様に対する説明をするのに精一杯な日々です。それをこの度ご紹介したいと思います。
前回は、
1、歌舞伎町火災で1階から出火によりエレベーター入り口の隙間から煙が吸い込まれて他の階に煙が行きその煙により死亡が多かったため
煙が行かないようにすること。また煙感知器と連動してエレベーターを止める法律。防火区画の要求でした。
2、シンドラーの事故により扉が開いて動かないよう二重対策(ブレーキ等)を設置し挟まれ防止の要求の法律
3、エレベーターが来ていないのにエレベーターの扉が開いてしまう。
二重のロック及びスイッチを設ける。落下による危険防止のお話しをしました。
あれから千葉県北西部、宮城県沖地震により、更に地震による要求が出来ましたので、ご紹介したいと思います。
東日本大震災によるエレベーターに対する国からの要求事項
建築基準法と労働基準法そして消防法に合格して、はじめて設置可能となりますこと、更に昇降機が国土交通大臣認定が必要となりましたこともお話ししたかと思います。
これらを合格して世の中に出せます。
このごろでは、既存に設置されておりますエレベーターについての法律また規制が昨年から打ち出され、既存が適合しないと既存不適格とレッテルが貼られます。
1年に1回必ず定期検査を実施し、各県による指定の書式にデータと機器の写真の提出があります。そこで合格、不合格、既存不適格箇所等の審査をされます。
その際に現在使用されているエレベーター、エスカレーターが、地震、停電、耐震等の基準を満たしているかの判断をされ、対策されていないと既存不適格となり、いつ対策をするか所有者に通知が配布されます。
A、地震とエレベーターの被害について
1、まず地震によりエレベーターの物損状態
東日本大震災時のエレベーターの機器の状態では、レールから外れる。ケーブルまたロープが絡む、機器が倒れる。
弊社も当時応援にて復旧作業にあたり、近くでは、千葉県の物件でもこの現象がありました。建物の揺れ方で変わるようです。
2、日常の備えと防災対策
これを教訓にエレベーターの機器に対策を指導していますが、その前に管理者、使用者の備えとして、日頃から災害等が発生した場合は、
エレベーターを使用しないことを心得ていただくようお願い申し上げます。
3、地震が発生したら、地震後の復旧
地震が発生した場合に必ず、閉じ込めがニュースでも流れますが現実にも周りで起きております。大手メーカーの三菱、日立、
東芝といえども機械なので閉じ込めはあります。
ご自身がエレベーターの中に乗っていた場合は、落ち着いてかご室内のインターフォンにて外部に連絡してください。
その際は、現在の状況、何階から乗って上がったか?降りたか?をお話しください。
ここで問題があります。かご室内のインターフォンは、外部の管理室また事務所等又は電話回線によるエレベーター会社
または警備会社の情報センターにつながっているのですが、まず管理室及び事務所に人がいるかどうか?
また電話回線が混雑等により不通になる可能性があります。本来これにより閉じ込めの救出を取ります
が大規模地震時には回線がつながらないと思います。
とにかく外部に連絡をするようにインターフォンをなり続け、ドアを定期的にたたき、中にいることを知らせることが先決となります。
例として神戸地震の時は、1週間閉じ込められた記録があります。
この時は、ホームエレベーターでかご室内には、電話機がなかったこと。一軒家で一人でエレベーターに乗ったことで行方不明となり1週間後に救出となりました。この後にホームエレベーターのかご室内に電話機の設置が義務化されましたが、回線の混雑、遮断となると電話機があっても外部の連絡が取れないでのです。
そこで下記の装置を設置するようになりました。
5、地震管制運転装置
地震管制運転装置とは、P波、S波の地震の揺れを感知してエレベーターを止めるか?再起動するか判断します。
まずは最寄階にまで運行してエレベーターの中にいる人を外に出してから判断します。
基本的に震度3以下は、最寄階に到着後に扉が開き一時停止後再起動しますが、震度3を超えると到着後扉が開いた後エレベーターは停止するようになっております。 但しこの装置が着いているエレベーターと着いていないエレベーターがありますので、ご注意ください。
最近のエレベーターは着いておりますが、旧機種(古いエレベーター)には、ほとんど着いておりません。
揺れた場合は、慌てずしばらく落ち着いてから、再度近くの階のボタンを押してみてください。ダメな場合は、外と連絡を取ってください。
6、停電時自動着床運転装置
本来では雷、台風他停電事故等により、一時的に停電が発生した場合。
エレベーターが運行中に停電停止した場合に一時的に停止し、
その後、最寄階にまで運転し、扉が開いて中に居る人が出れるようにする装置復旧するまでエレベータ―を停止する装置です。
電気が復旧すると自動的に動きます。
これを応用して、近隣の火災時に建物の電源が遮断、ケーブルが火災により切断された場合また地震時にも同様揺れによりケーブル
が遮断され電源今供給がなくなった場合も同様に設置しておくと良いです。
ただしバッテリーをエレベーターに設置しますので、車同様にコストがかかり、2〜3年周期で交換になります。
7、耐震対策
機器の転倒、ケーブルの絡み、レールからの外れの対策として耐震対策構造をするように指示が出ております。
レールから外れないようにガイドを深くする。
ワイヤーロープ、電線が揺れても絡まないようにメッセンジャーを張る、機器が転倒しないように倒れ止めを設置する等の対策をするようになっております。
これら5〜7の耐震対策を実施されると地震、停電時において発生した場合にはエレベーターに中に閉じ込められることがなく安心してご利用頂けるのですが、なかなか旧機種(古い)エレベーターに設置されているものが少ないようです。設置するには、ほぼ心臓部の巻上機、油圧コンプレッサー、電気関係、駆動関係を変え、各階入口については、シャッターまたはスクリーンを設置することとなり、高価の費用になりますので、設置が少なく既存不適格の改善をしている物件がありません。
地震大国の日本、あれだけの各地に起きた大地震の教訓から、本来補助金等が出て、設置しても良いと思いますが、国はそこまで見ないで指導ばかりです。 実際 東日本大震災の時、御殿場周辺でも震度5から6の地震が発生しているのですが、あの地域だけは昔から富士山また足柄の断層(神奈川西部地震)の発生に用心して、新築時の耐震レベルが高かったので、被害が少なく。瓦の屋根の損壊程度が何件のみと思います。今の全国耐震レベルが昔の伊豆、静岡、神奈川西地域のレベルとなっております。
今まで述べてきました指摘事項を改善していないものが、既存不適格となり、所有者、使用者に設置するように通知が配布され、施工の実施計画等の指令が出ること。また前回の3項目の各階のエレベーター入り口の煙対策、シンドラーの戸開対策も設置されていなければ既存不適格となることから、行政で次ぎから次と法律打ち立て検査、審査しますが、最終的に改善されてなく事故が発生した場合は、所有者、使用者の責任になってしまいます。ご注意ください。
さてこのようにもしもの場合のエレベーター、エスカレーターのご注意とともに所有者であった場合もご注意ください。やはり乗り物なんです。
極力 エレベーター、エスカレーターは、使用しない方が、健康のためもしもの場合の避難のためと思います。
そんな中、最近では、更なる国から省エネの指示がエレベーターだけでなく建物全体に要求が打ち出されているようです。
これに補助金がでることから、今改修しているところ、また近々改修する建物には、省エネ対策として二重ガラス、照明はLED、蓄電、ソーラーパネルにて電気を発電。ここにエレベーターも回生制動により発電させ、自力にて駆動します。要は車のプリウスと同じことをエレベーターにも適用しようと試みているようです。
こうなると弊社のような会社では、技術面において、開発費があるわけでもないので、追いつくことなんて出来ない状況です。
さてそうなると弊社のこれからの生きる道は、町のエレベーター屋 昔の車の町工場のようになっていくと思います。そこで皆様にエレベーターについての機能面、法規面、他社メーカーについて等ご相談頂き、細々と皆様に御役に立てれば幸いと思います。
ご清聴頂きまして、ありがとうございます。
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